■こまひこ、ひさしぶり。
もうミニスカートを見ると「けしからん」と言うクセは治りましたか?毎日のように怒っていたこまひこをなつかしく思います。
こまひこに私が「何かドキドキしないのよね。最初からだけど」と冷たく言ってお別れすることになったあの日から、もう30年が経ったのですね。月日が流れるのは早いものです。
お手紙を書いたのは、とくに用事があるわけではないんです。ただふと思い出して懐かしかったので、思いつくままに手紙に書こうと思いました。ふふ。驚いたかな?
今振り返って考えてみると、あのころの私ってこまひこに迷惑かけてばかりでしたよね。でも、いつもツンツンしてる私にこまひこは「おまえの純粋さは分かっているから」なんて言ってくれて、少し引いたけど、なんだか心温まったのを覚えています。当時クラスメイトと浮気していた私はフクザツな気持ちではあったけれど、そんな風に言ってくれる人はいなかったから。
確かあのとき、私にとっては5人目の彼氏かなにかで、こまひこにとっては初恋だったんですよね。最初のころのこまひこはやけに馴れ馴れしくて、初デートからいきなりキスしようとしていましたよね。「付き合えばキスしていいんじゃないの?」って(笑)。
告白するときのこまひこは、必死で「一生大事にするから」とか酔っ払ったことを言っていましたね。とても嬉しかったのですが、お別れしたときには、やっぱり詐欺だったなぁと思ったものです。後先考えないところはこまひこらしいとも思いました。
恋愛を総合的に考えれば、私はこまひこと付き合えてよかったなぁと思います。当時は少し恥ずかしかったし疲れたけれど、私が男性のように強くなれたのも、こまひこがどこか頼りなかったおかげだと思っています。
いろいろ書きましたが、私はこまひこのことがそれでも好きでした。これからもこまひこらしくいられるよう、そしてたまにはスーパー以外で洋服を買って(笑)、幸せをふりまいてください。
またいつか会いましょう。では。
P.S. こまひこが誕生日にくれた下着、そろそろ捨てていいですか?
■あなた、いったい誰?(「初恋の人からの手紙」より)